MJビジネス 2020年6月号


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ProfileYabeTomoaki1986年生まれ、福島県出身。イギリスのオックスフォード大学卒業後、2010年に野村総研入社。コンサルティング業務に携わる。2013年に家業である大善に転職、日本国内1年半を経験し、2014年にミャンマーに駐在し現職ProfileYabeTakaaki1987年生まれ、福島県出身。スコットランドのエジンバラ大学卒業後、2012年に日揮に入社。天然ガスのプラントなどを担当し、タイ駐在を経験。兄の矢部MDと同じように2015年に大善に入社し、16年よりミャンマー駐在45ftトラックを24台所有物流効率の改善にも着手元文5年(1740年)に創業した老舗の物流企業・大善。昭和25年(1950年)に福島県の喜多方市で倉庫事業を開始し、現在では3PL(3rdpartylogistics)やトランクルームサービス、EC・通販サービスなど多角的に分野を拡大、代々に渡る「報徳的商店経営」を理念に“三方よし”の姿勢で事業を続けてきた。民主化以降、物流需要の高まりを受け、海外初拠点となるDAIZENMYANMARを2015年に設立し、16年にティラワ経済特区(SEZ)で事業を開始。国際水準のインフラを整備した経済特区であり、日本の官民がバックアップするという背景やミャンマーで初の保税倉庫が認められる物流拠点としての魅力を感じ、進出を決めた。創業当初はフォワーディング・通関業務を主業とし、その後、ティラワ内の工場の増加とともに倉庫・輸送事業が増加、現在では定期的に国境陸運・海上輸送なども手がけるまでに成長。最大の強みは、倉庫・輸送・フォワーディング・通関とすべて内製化した物流事業のワンストップサービス。内製化することで先進国では想像できないような困難に直面することで得られる現場での知見と積極的なハード面への投資により、提案の幅を広げている。45ftのトラックを24台、32ftのトラックを10台所有し、大量輸送によって物流単価を下げることで差別化を図り、さらにミャンマーでは珍しい横から開閉できるサイドカーテンセミトレーラーも有するため、物流効率も高い。現在、協力会社とともにヤンゴン市内およびマンダレーなど毎日約30〜40台のトラックが稼働し、ミャンマーの物流を支えている。配車やGPSによる運行管理、ドライバーの運転技術評価など、多岐にわたる課題を最新システムを通じて一元管理。「蓄積されたGPSデータをもとに配車を組むことで車両の回転率を上げたり、ドライバーにおいては運転技術を数値的に評価してあげることで、より安全に・よりエコに運転する意識がようやく芽生えてきています」と話すのは、兄の矢部MD。また、倉庫部門においては、ハンディーターミナルを活用した倉庫管理システムを導入し、入出庫・在庫・ロケーション管理など、煩雑な倉庫内オペレーション精度と生産性向上に努めている。今後はデータをクラウド管理することで、在庫情報をリアルタイムで顧客と共有、発注業務も同システムで行うことができ、現場のスタッフはスマホアプリで対応できる新システムの導入を見込むなど、新たな投資にも余念がない。クラウドを使う新システム拠点の拡大も見込むかねてより好調なのが、非居住者在庫サービス。これは、ミャンマーで登記をしていない企業でもティラワの倉庫で保税保管できる仕組みであり、ティラワで最初に保税ライセンスを取得した同社は、非居住者在庫サービスを常時運用し、こうした得意領域も強みの一つとなっている。なお、通関部門においても、自社開発したシステムにより業務の効率化を実現。不透明なミャンマーの通関事情を踏まえ、貨物トラッキングや通関所要日数など、各種KPIを管理することで顧客のニーズに応えている。「お客様にとって利便性の高いサービスこそが、この国では商機になりますし、通関においてお客様自身で書類の不備などがわかるシステム導入も考えています」と語るのは、弟の矢部デュプティMD。新サービスとして取り組んでいるのは、物流コンサル。「ミャンマーの物流は課題が山積みです。ムダ・ムラ・ムリがあらゆる場面で存在し、人件費が安い割に物流費は高いのが現状」と前職が事業コンサルだった矢部MD。納品先での荷待ち時間削減のため、各サプライヤーの納品時間や出荷時間を分散する提案をしたり、パレットやフォークリフトのレンタル会社と役割分担し、パレタイゼーションによる効率化を数値的に示したりと、日本でのソリューションをそのままミャンマーに生かせる分野が散見している。現在の拠点はヤンゴン市内、ティラワSEZ内とティラワすぐ横に倉庫の3ヵ所。今後は、工業団地があるミンガラドンなどの北部にも輸送拠点の立ち上げを見込み、さらにミャワディの仮事務所の拡充も予定。トラックや倉庫、さらにシステムへの投資を続けることで、よりオペレーションコストが下がり、ゆくゆくはローカルの競合にも対抗できるほどの価格競争力もつけたいとしている。「ミャンマーの物流では、課題解決のために法の整備が急務な分野もありますが、それらに取り組んでいくことで、結果的に仕事にもつながってきました。ミャンマーでの初の保税倉庫の導入やミャンマーフレイトフォワーダー協会との国境でのトレーラースウォップに関する実証実験など、新しい解決策につながるというやりがいがあります。お客様にもさらに貢献したいと考えております」(矢部MD)「ローカル企業がライバルでも、利益が出れば、営業もしやすくなります。そのためにあらゆるシステムを刷新し、ユーザーエクスペリエンスも高めていきたいですね」(矢部デュプティMD)Jun202017


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